中国の城とヨーロッパの城がある町・台湾台南市で城めぐり

台湾の城

2020年最初の旅

台湾南部の町・台南と高雄を訪れました。「台湾=お城めぐり」というイメージはありませんでしたが、素敵なお城がありました。今回は、台南に残る5つのお城をご紹介します。

台南一の観光スポット・赤崁楼

赤崁楼こと普羅民遮城(プロヴィンシア城)は、オランダ統治時代の1653年、オランダ人が赤崁台地に築いた城です。中心に長方形の主堡(本丸)、その西南と東北に稜堡を設けた稜堡式城郭となっています。現在、国定史跡「赤嵌樓」として保存されています。

稜堡とは

城壁や要塞の、外に向かって突き出した角の部分。また、そのような形式で造られた堡塁 (ほるい) 。大砲による攻撃の死角をなくすために考案されたもので、堡塁全体は星形となる。ヨーロッパで発達。日本では五稜郭などに取り入れられている。りょうほう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

つまり、稜堡はイカの頭のような形をした張り出し部分を指します。現在、主郭と西南稜堡には、清朝統治時代の楼閣がそびえています。

赤崁楼平面図(青い線で囲んだ部分が稜堡)

見どころ①主堡

主堡の上には、光緒12年(1886)に建立された文昌閣が建っています。こちらの一階には、さまざまな資料や遺物が展示されています。なかでも、オランダ統治時代のプロヴィンシア城の復元ジオラマは必見です。

ジオラマ(左上が東北稜堡、中央が主堡、右下が西南稜堡)

1944年、オランダ統治時代の正門が見つかっています。城内に入る通路は塞がれていますが、注意深く観察すると、門扉の跡を確認することができます。それと、北面には当時の城壁が残っています。

正門

見どころ②西南稜堡

稜堡の上には、光緒元年(1875)に建立された海神廟が建っています。二階には、当時のさまざまな様式の船の模型が展示されています。また、西南稜堡と主郭の間には井戸があります。井戸は城に欠かせないもの。もしかすると、プロヴィンシア城の遺構なのかもしれません。

井戸

見どころ③東北稜堡

1944年に発見された稜堡の遺構がよく残っています。案内板の図を参考にしながら見学すると、稜堡の構造がよくわかります。城マニアにとっていちばんの見どころは、東北稜堡といえるでしょう。

レンガの接合部には、砂糖水、もち米汁、カキ殻の灰などを調合した接合材(三合土)を使用

鄭成功の王城・安平古堡

1624年、現在の台南市安平区を占領したオランダ人が築いたのが、安平古堡こと熱蘭遮城(ゼーランディア城)です。1634年に完成したこの城は、内城と外城からなる二重構造の稜堡式城郭です。現在、国定史跡「台灣城殘蹟(安平古堡殘蹟)」及び「熱蘭遮城城垣暨城內建築遺構」として保存されています。

安平古堡平面図(点線は消滅した城壁、太線は今も残る城壁)

見どころ①外城

保存状態がもっとも良いのがこの部分です。

外城

見どころ②半円形の城壁と井戸

安平古堡の大部分は日本統治時代に整備されたもので、内城の遺構は半円形の城壁と井戸のみです。

城壁と井戸

見どころ③ゼーランディア城博物館

光緒2年(1882)頃に建てられた清朝の税務司署が、現在は博物館として利用されています。

安平古堡復元ジオラマ。手前が外城、奥が内城(ゼーランディア城博物館展示)

ここには、ゼーランディア城の発掘調査で見つかったさまざまな遺物が展示されていますが、なかでも陶器の展示は必見。台湾、オランダ、中国の遺物だけでなく、ベトナム、タイ、日本のものも見つかっています。展示品の数は決して多くないですが、とても見応えのある博物館です。日本語表示があるのもありがたいです。

中国式砲台の傑作・安平小砲台

道光20年(1840)アヘン戦争の際、清朝がイギリスの侵攻に備えて築いた砲台です。丁寧に加工された花崗岩が印象的なこちらの砲台は、直轄市定古跡として保存されています。

安平小砲台

西洋式砲台の傑作・憶載金城

清朝統治時代の光緒13年(1876)に、清朝が日本の侵攻に備えて築いたお城です。安平大砲台、二鯤鯓砲台とも呼ばれるこの城は、四角形の郭の四隅に稜堡を設けた典型的な稜堡式城郭です。現在、国定史跡「憶載金城」として保存されています。

憶載金城平面図(OpenStreetMap)

見どころ①城門

幅7m、高さ6.2m、奥行き21.67mのレンガ積みの中央に、アーチ型のトンネルが設けられています。このレンガは、すでに廃墟となっていたゼーランディア城から持ってきたものだそうです。

城門

見どころ②水堀

城の周りを水堀が巡っています。水堀の幅は22m、稜堡の角部では13.3mと少し狭くなっています。海水を引き込んでいるため、潮の満ち引きによって水位が変化するそうです。

水堀のことを護城河という

見どころ③稜堡

四隅に設けられた稜堡は、フランス人技師が設計したものです。当時、西北と西南の稜堡にアームストロング砲が設置されていましたが、日露戦争以降、行方不明になったそうです。そのため、現在設置されているのはレプリカです。

アームストロング砲のレプリカ

台湾の中心・台湾府城

台湾統治の拠点として清朝が築いたのが台湾府城です。現在、台湾の中心地は台北ですが、オランダ統治時代から清朝統治時代までの約250年間、台南が中心地でした。築城当初の城壁は木柵でしたが、時代とともに竹城へ、さらに土城(三合土)へと変化していきました。

乾隆17年(1752)の古絵図(現地案内板)

見どころ①小西門と東城壁

もともと府城の西側にあった城門ですが、西門周辺の道路整備が行われた際、こちらに移築されました。

城門の左右の城壁に注目

城門と同じくらい、あるいはそれ以上に見応えがあるのが城門の両サイドに残る城壁です。断面を見ることができるのがポイントです。これを見ると、土城だということがよく分かります。

見どころ②巽方砲台

巽方砲台こと巽方靖鎮は、道光(1836)に築かれた砲台で、台南内陸部に残っている唯一の砲台です。現在、直轄市定古跡として保存されています。現在は寺院の一部になっているため、当時のままの姿ではありませんが、貴重な遺構であることには変わりありません。

建築材としてサンゴ石灰岩と三合土を使用

見どころ③大南門

台湾府城のなかで、もっとも見応えがあるのが大南門です。直轄市定古跡として保存されています。赤瓦が葺かれた門楼と、出入口の前に設けられた半月状の空間・甕城(おうじょう)が印象的です。

大南門

この他の城壁や城門も見ましたが、どうやらこの城は、重要ポイントには花崗岩を使い、それ以外はサンゴ石灰岩+三合土を使うパターンが多いようです。

まとめ

今回の旅で、台南には中国式の城と、ヨーロッパ式の城が混在しているということを知りました。「ヨーロッパのお城に興味はあるけれど、ヨーロッパに行くのは大変…」そう思った方は、ぜひ台南を訪れてみてください。

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